ユダヤ5000年の叡智
なぜユダヤ人の成功率が突出して高いのか。ユダヤ5000年の伝統に裏打ちされた《7つの人生成功の秘訣》と、それらを脈々と子孫に伝える《ユダヤの教育の神髄》をわかりやすく解き明かす注目の書。
【ユダヤ人が成功する理由】
私は、一九六七年からフランスのロスチャイルド家の基金によって、東京の日本ユダヤ教団の初代ラビとして、十年間日本に滞在した。
その後、アメリカニューヨーク州のテンプル・イスラエル高校の校長を務めたのち、同じニューヨーク州にあるユダヤ人のための名門私立学校ノース・ショア・ヒーブルー・アカデミー(学園)の校長に就任し、第一線でユダヤ人子弟の教育にたずさわったという経験をもっている。
そういう意味では、私はユダヤ人地域社会の指導者であるラビという立場でありながら、教育者でもあり、さらに日本文化を肌で学んだ数少ないユダヤ人の一人である。
おもしろいことに、今でもよく日本の方から訊ねられる質問がある。
それは、「ユダヤ人は、世界に数知れない多くの優れた業績をのこしてきたが、その成功の秘訣は何ですか」という質問である。
それに対して、私は「それはユダヤ文化にあります。そして、その核心がユダヤの教育です」と答えるのが常である。
ではなぜ、ユダヤの教育がユダヤ人の力の源泉となっているのか。
それを理解していただくためには、まず、われわれユダヤ人が、長い間キリスト教徒から理不尽な迫害を受けてきたという歴史を知っていただかなくてはならない。なぜなら、ユダヤ人は、そのために一八七八年もの間、流浪の民として世界に四散し、安住の地をえることができなかったのである。
それは、キリスト教徒から、ユダヤ人が〝主(キリスト)殺し〟(ダイアサイト)の民族として蔑視されたこと、そして、ユダヤ人がイエスを神として認めなかったことに大きな原因があった。それで、ユダヤ人は狡猾であるとか、性悪であるとか、悪魔と手を結んでいるとか、さんざん罵られ、その結果、ユダヤ民族そのものが、いつ地球上から消滅してもおかしくなかったのである。
そういう中で、われわれは、ユダヤ教を中心としたユダヤ文化を、独自の教育によって親から子へ、子から孫へと確実に伝え、頑なにユダヤ文化を守ることで生き残ってきた。だから、ユダヤ人の力はつねに一つのこと、教育から発しているといっても過言ではないのだ。
したがって、ユダヤ人にとって、もっとも大切な場所はどこかといえば、家庭とシナゴーグ(ユダヤ教会)と学校の三つである。
そのなかでも、家庭が、神聖さにおいて地位が一番高い。なぜなら、かりにシナゴーグや学校が破壊されても、家庭があり、家庭が健全であるかぎり、伝統が絶たれることがないからである。
そもそも、どの民族にも、その民族をつくってきた鋳型というべき祖型が、かならず存在している。その祖型は、過去の民族の歴史によって形成されるものである。とりわけ秀でた民族は、先人がつくってきた優れた祖型によって、そうなるものだ。
だから、ユダヤ民族は、その貴重な祖型を子どもたちに教え、伝えていく場である家庭を、非常に重要な、そして神聖な場所とみなしているのである。
【ユダヤ人は他の民族よりも賢い?】
ところで、二〇〇五年にニューヨークで発行された、人気の高い月刊誌『ニューヨーク』の十月号で「いったい、ユダヤ人は他の民族よりも賢いのだろうか?」という特集記事を組んでいる。その一部をご紹介しよう。
この記事によると、ユダヤ人は世界人口のわずか〇・二五パーセント、アメリカの人口の三パーセントにしか当たらないのに、今日までノーベル賞の二七パーセントを授賞し、コンピューター科学賞の二五パーセント、世界チェス選手権の優勝者の半分を占めている。ストックホルムで催されるノーベル賞授賞式で授賞する百人のうち、二七人がユダヤ人である。
また、この記事はユダヤ人の千人当たり二三人が、IQ(知能指数)で一四○を超えているのに対して、白人の場合には千人に四人しかいないと指摘されていた。ちなみに、IQの平準値は一〇〇である。
二〇〇二年にアメリカの著名な経済誌『フォーブス』が、「世界トップの四百人の億万長者」のリストを発表したが、ユダヤ人が一五パーセントを占めていた。
あるいは、アメリカにおける最近の調査によれば、ユダヤ人の一世帯当たりの平均年収は、白人のキリスト教徒の平均年収の二倍である。
そして、ユダヤ人は、政界でも活躍している。
二〇〇六年のアメリカの上下院議員を選ぶ中間選挙では、ユダヤ人の上院議員が一一人から一三人に増え、下院では三七人から四三人に増えた。ユダヤ人はアメリカの人口の三パーセントに満たないのに、上院議員の一三パーセントと、下院議員の一八パーセントを占めているのだ。
州知事については、ニューヨークのエリ・スピツァー、ペンシルバニアのエド・レンデル、ハワイの女性知事のリンダ・リングルがいる。
ユダヤ人は、ハワイの人口の一パーセントでしかない。リングル知事は共和党員であるが、敬虔なユダヤ教徒であって、「ユダヤ教の教えを守ることが、自分をつくってきた」と述べている。
このように、現在でもユダヤ人は、成功率が最も高い民族だといわれている。
それはわれわれが、五千年以上にわたって、祖先の輝かしい文化を受け継ぐ努力を行ってきたことによって、力を手にすることができたからである。
言い換えれば、先人がつくってくれた祖型を守ってきたから、今日でもユダヤ人が力に溢れているのである。その祖型がわれわれの力の源泉である。そして、その源泉は、汲めども汲めども、力がわく泉なのである。
私は現在、アメリカニューヨーク州に住んでいるが、今日のアメリカ人は、古いもの、先人が伝えてきたものを遅れたものとして、毎日のように捨てつつある。このようなことが続けば、アメリカはいずれ近い将来に、力を衰えさせることになるだろう。
いずれにせよ、長い歳月によって鍛えられ、証されてきた文化は、強い力に溢れている。反対に、祖型を軽んじた民族は、衰退していずれ滅ぶことになる。だから、その祖型を軽んじたり、疎かにしてはならない。
それほどまでに、祖型というものは尊い、かけがえのない財産である。祖型を受け継ぐことのなかに本当の歓びがある。ユダヤ人は、優れた先人の文化を伝承することによって、これからも旺盛な活力をもち続けることになろう。
ところで、このあと述べる「ユダヤ人の成功の秘訣」は、どれもユダヤの教育によって、受け継がれてきたものである。ユダヤ人は、これらの秘訣の数々を、子どものときから学び、成長するのである。
そういう意味では、「ユダヤの教育」を学ばないかぎり、ユダヤ人の成功の秘訣は、真の意味で理解できないだろう。
したがって、本書は、三部構成になっている。まず第一部で「ユダヤ人の成功の秘訣」を七つ述べ、第二部で、ユダヤ人の成功の土台といえる「ユダヤの教育」について詳しく述べたい。
そして、「ユダヤの教育」を解説するにあたって、まず第一部の【成功の秘訣7】 「子孫に伝えよ」で、ユダヤの家庭教育について述べた上で、第二部では、ユダヤ人の学校教育について詳しく解説したい。
第二部は、私が校長を務めていた時代の日記を通して、ユダヤの子どもたちが一年にわたって学校で何を学ぶのかを、さまざまなエピソードをまじえながら解説したものである。この第二部で、ユダヤの教育の真髄にふれていただければ幸いである。
さらに、本書第三部では、私の長年の親友であり、本書を翻訳してくれた加瀬英明氏に、「日本人がユダヤの教育に学ぶべきこと」と題して、日本の読者のためにわかりやすく解説してもらった。そちらも参考にしていただきたい。
マーヴィン・トケイヤー
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