バップ~モダン・ジャズ・ピアニストにとってバド・パウエルは神格化した存在である。モダン・エイジ初期において、パーカー、ガレスピー、ケニー・クラーク、モンクなどともに
モダン・ジャズを形成し、ジャズを芸術にまで高めた一人であるが、そのプレイにおいても
、影響力においてもことピアノという楽器に関しては絶大なる巨匠として君臨した。その秘訣は
、このアルバムに聴かれるようなパップのイデオムをトータルに完成させ、スタンダードにおいて
も豊かで鑑賞に堪えうる美的な形式にまで高めたからだといえよう。実際ピアノという楽器の持つ
総合的な表現力は、管楽器やリズム楽器の前衛性を、よりバランスよく完結した音楽へと導く特性
がある。「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」、「ニューヨークの秋」などで聴かれるリリカルで完璧な
テンポをキープしながらの演奏は、50年代を通じて、他の追随を許さない完成度を持っていた。
もちろんその後の個性的なハード・バップ・ピアニストの輩出はモダン・ジャズ・ピアノ・シーンに
様々な彩を添えたが、モンクなど数人の例外を除けば、スコット・ラファロを擁したビル・エバンス・トリオ
の出現までパウエル色を払拭するピアノ・トリオはついぞ出現しえなかったといっても過言ではないだろう。
それにしても、このアルバムのパウエルはなんと素晴らしいのだろう。渡米前の秋吉敏子が、横浜の
ジャズ喫茶「ちぐさ」で、パウエルのブルーノート盤を、擦り切れるほど聴いていたというエピソードが残って
いるほどだ。バド・パウエルはモダン・ジャズのルーツの宝庫であり、我々はいつでも彼のアメイジング
に立ち戻ることで故郷を味わうことが出来るのである。
- リーツ・アンド・アイ - Reets And I
- ニューヨークの秋 - Autumn In New York
- アイ・ウォント・トゥ・ビー・ハッピー - I Want To Be Happy
- イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー - It Could Happen To You
- シュア・シング - Sure Thing
- ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス - Polka Dots And Moonbeams
- グラス・エンクロージャー - Glass Enclosure
- カラード・グリーンズ・アンド・ブラック・アイ・ピーズ - Collard Greens And Black Eyed Peas
- 虹の彼方に - Over The Rainbow
- オードリー - Audrey
- ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド - You Go To My Head
- オーニソロジー(別テイク) - Ornithology (alt. Take)