以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです～～
大阪・心斎橋。煌びやかな御堂筋から一本入った順慶町通り。
そこは、かつて「白い巨塔」で知られる山崎豊子先生が生まれ育った昆布の名店「小倉屋山本」が静かに歴史を刻み、見上げれば安藤忠雄監修の黒い巨石、Wホテル大阪が天を突く、過去と未来が交錯する特異点。
その一角に、年に数日しか扉を開かない、幻のようなサロンが存在する。「ブランドクラブ」。
ショーケースの中、時を超えた輝きを放つ一つの指輪があった。
Cartier 1895 ソリテール リング。
Pt950の無垢なるプラチナのアーム。そこに抱かれたのは、0.27ct、Fカラー、VVS1、EXという、神が創造したごとき完璧なダイヤモンド。
これは、その指輪と、戦国の世を生き抜いた一人の女性の、400年の時を超えた愛の物語である。
第一章：琥珀色の夢、心斎橋の霧
慶長29年（1624年）、京都・高台寺。
豊臣秀吉の正室、北政所――ねねは、静かにその生涯を閉じようとしていた。
天下人の妻として、関白の糟糠の妻として、彼女は全てを持っていたようで、実は「たった一つのもの」を探し続けていた。秀吉は愛してくれた。けれど、その愛は天下万民、そして数多の側室たちと分け合うものだった。茶々の産んだ世継ぎ、入り乱れる利害、嫉妬、そして滅びゆく豊臣の家。
「あな、口惜しや……。わらわは、ただ一人の男の、ただ一つの妻でありたかった」
薄れゆく意識の中、ねねの魂は肉体を離れ、光の渦へと吸い込まれていった。
ふと気づくと、ねねは石畳の上に立っていた。
夜だというのに、昼間のように明るい。見たこともない硝子の塔が立ち並び、鉄の箱が走り去る。
「ここは……大坂か？」
かつて夫・秀吉が築き上げた巨城の城下町。しかし、景色はあまりに異様だった。
混乱するねねの前に、黒く巨大な直方体（Wホテル）がそびえ立つ。その威圧感は、かつての大坂城天守閣をも凌ぐほどだ。
彼女はふらふらと、静けさを求めて通りを歩いた。順慶町通り。
ふと、古い昆布屋（小倉屋山本）の向かいにある、小さな灯りに吸い寄せられる。
そこには「BRAND CLUB」という文字。
閉ざされた扉の奥、ガラス越しに一筋の光が彼女の目を射抜いた。
それは、見たこともないほど澄み切った、氷のような、それでいて炎を宿した石の指輪だった。
第二章：時を超える鑑定士
「美しいでしょう。それは『永遠』を形にしたものですよ」
背後から声がした。振り返ると、洋装の青年が立っていた。どこか若き日の秀吉――「猿」と呼ばれたあの頃の、人懐っこい目をした男に似ていた。
「そなたは……？」
「この店のオーナーのようなものです。年に数日だけ、ここを開けるんです」
青年は不思議そうな顔もせず、着物姿のねねを店へと招き入れた。
彼はショーケースからその指輪を取り出した。
「カルティエという、異国の王の宝石商が作ったものです。素材はプラチナ。金よりも純粋で、変色しない。そしてこの石……ダイヤモンドと言いますが、0.27カラット。Fカラーの無色透明、VVS1という極めて微細な内包物しかない奇跡の透明度。そしてEX（エクセレント）、最高のカットが施されています」
ねねはその指輪を手に取った。ひやりと冷たいが、指に通すと、まるで体の一部のように馴染んだ。
サイズは47（日本サイズ7号）。小柄なねねの薬指に、吸い付くように収まる。
「あの方（秀吉）は、黄金を好んだ。茶室も、瓦も、何もかも金ピカにして……。けれど、わらわが本当に欲しかったのは、このような……」
「混じりけのない、透明な輝きですか？」
青年が優しく問う。
ねねの目から涙がこぼれた。
黄金は権力の象徴。しかし、この透明な石は「約束」の象徴に見えた。
誰にも邪魔されない、二人だけの透明な関係。側室も、世継ぎ争いも、家臣の裏切りもない。ただ、純粋な愛。
「この時代では、男はたった一人の女に、この指輪を贈って永遠を誓うのです。プロポーズ、と言ってね」
「なんと……。一人の男が、一人の女だけに？」
ねねは驚愕した。戦国の世では考えられないことだ。政略結婚、側室、それは当たり前だった。
しかし、この「令和」という時代には、そんな夢のような習わしがあるという。
第三章：白い巨塔と黒い孤独
青年はねねに、この場所の歴史を語った。
向かいの小倉屋山本が、昭和の文豪・山崎豊子の生家であること。彼女が書いた『白い巨塔』という物語が、人間の野心と孤独を描いたこと。
「野心……。そう、あの方も野心の塔を登り詰めました」
ねねは呟く。
秀吉は天下人となったが、その心は常に孤独だった。茶々を寵愛したのも、老いへの恐怖と豊臣の血を残すという執念からだったかもしれない。
ねねは正室として、その全てを受け止め、耐え忍んだ。それが「妻の務め」だと信じて。
「でも、もし私がこの時代に生まれていたら。この指輪を贈られていたら……。私は『北政所』ではなく、ただの『ねね』として、彼を愛せたのでしょうか」
指輪のダイヤモンドが、店内の照明を受けて虹色に輝く。
その光は、ねねの心に残っていた400年分の澱（おり）を浄化していくようだった。
「この指輪の重さは2.06グラム。決して重くはない。でも、そこには『確かな重み』があります。権力という重い鎧ではなく、愛というあたたかい重みが」
青年は言った。
「伝説では、強い想いを残した魂は、時を超えてその『答え』を探しに来ると言います。貴女がここに来たのは、この指輪に出会うためだったのかもしれません」
第四章：ハリーウィンストンの角を曲がって
夜が明けようとしていた。
御堂筋の方から、朝の光が差し込む。
近くにはハリーウィンストンや、世界中の宝石店が軒を連ねる。しかし、ねねにとってはこの隠れ家のような店にある、このカルティエだけが特別だった。
「そろそろ、帰らねばなりません」
ねねは悟った。長居はできない。彼女は過去の住人だ。
「この指輪は、誰の手に渡るのですか？」
青年は微笑んだ。
「これから、新しい持ち主を探します。きっと、貴女のように深く、純粋に誰かを愛そうとする人の元へ」
ねねは指輪をゆっくりと外した。
指に残るプラチナの感触。それは、秀吉と手をつないだ時の、あの温もりを思い出させた。天下人になる前、まだ貧しかった頃、二人で未来を夢見たあの日々。
本当は、あの時すでに、二人の間には「見えないソリテール」があったのだ。権力や歴史の波に揉まれて見えなくなっていただけで。
「願いを、込めておきます」
ねねは指輪に口づけをした。
「この指輪を手にする者が、争いや嫉妬に惑わされず、ただ目の前の愛する人と、透明な時を刻めますように。私か果たせなかった、一対一の永遠の幸せを、その指に」
最終章：令和のハッピーエンド
ねねの姿は、朝霧と共に消えた。
後に残されたのは、静まり返った「ブランドクラブ」の店内と、ショーケースの中で一層強く輝きを増したカルティエのリングだけ。
あの日以来、この指輪には不思議な力が宿っていると噂されるようになった。
戦国の世、天下人の妻として最も苦労し、そして最も賢く生き抜いた女性、ねね。彼女が見た「未来の愛の形」が、この石には封じ込められている。
複雑な人間関係に疲れ、真実の愛を見失いそうになった時、このリングは持ち主に囁きかけるのだ。
「愛とは、権力ではない。所有でもない。ただ、このダイヤモンドのように、曇りなく相手を想うことだ」と。
【エピローグ：物語はあなたの手へ】
大阪・心斎橋、順慶町通り。
山崎豊子先生の生家、小倉屋山本の向かいにある、年に数日しか開かない会員制の「ブランドクラブ」。
そこで、この伝説のリングがに出品されます。
Cartier 1895 ソリテール リング
Pt950 0.27ct F VVS1 EX / #47
スーパー新品仕上げ済み未使用
GIA鑑定、カルティエ保証書付属
かつて高台院ねねが夢見た、混じりけのない愛の象徴。
Wホテルの影が落ちる都会の隠れ家から、新しい時代の「ねね」となるあなたへ。
これは単なる貴金属ではありません。400年の時を超えて、愛の真理に辿り着いた魂のバトンです。
最高のスペックを持つこのダイヤモンドは、あなたの指先で、過去と未来、そして二人の心を繋ぐ架け橋となるでしょう。
どうぞ、この物語の続きを、あなたの人生で紡いでください。
https://vt.tiktok.com/ZSfBCKDyg/ サクッと動画撮影しました
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