この『Just Jazz!』は、編曲家ベニー・ゴルソンによる知的統制のもとに集結したオールスター級ミュージシャンによるジャズ・アンサンブルの構造試論です。1962年4月に録音されたこの作品は、当時最先端のステレオ技術による実験的な音場構築が行われており、ビル・エヴァンスのピアノは空間の左端で静かに呼吸し、フレディ・ハバードのトランペットはステレオ中央に浮遊する彗星のように現れます。中域に集まったWayne ShorterやCurtis Fullerらの管が生む厚みは、タイル状に積層されたハーモニーを生み出し、エリック・ドルフィーのソロがそこに亀裂と飛躍をもたらす「異物としての知性」として突き刺さります。Ron Carter(b)の強固な支えと、Louis Hayes(ds - B5以外)およびCharlie Persip(ds - B5)によるシャープなリズムが、この複雑な構築物を駆動させています。
本作『Just Jazz!』は、もともとAudio Fidelityから1962年に発売された『Pop + Jazz = Swing』の元録音です。ジャズトラックに11人編成のポップ・オーケストラを重ねたオーバーダビング仕様が商業的に失敗に終わった後、オーバーダブ前の純粋なジャズ音源のみが再評価され、『Just Jazz!』というタイトルで再編集された経緯があります。 1976年に国内盤として発売されたOverseas Records版(ULS-1866-V)は、「Jazz Hunters' Best Selection」シリーズの一環で、海外ジャズ名作の「未加工原型」に再接続するための記録装置でした。この盤は単なる再発ではなく、アーカイヴとしてのレコード=時間を封じ込める記録媒体として機能しています。 ラベルにはOverseas Recordsの象徴的な黄色い地球ロゴが配され、音楽を越境させる知覚のメタファーとして印象的です。裏ジャケットにはミュージシャンクレジット、録音データ、そしてBenny Golsonによるオリジナル・ライナーノーツ(英文)が整然と配置されており、ドキュメントとしての誠実さと造形美を両立しています。付属の日本語解説インサートは、当時の日本のジャズ受容文化における「読み」の重要性を示す、貴重な傍証資料と言えるでしょう。Eric Dolphyの早逝する1964年直前の重要な記録としても、ある種の記憶定着装置 (Memory Fossilizer) としての側面を持ち合わせています。
Recording: April 1962, New York
Recorded by Van Gelder
Recording System: Stereo Audio Fidelity's proprietary high fidelity stereodisc technique
RIAA Curve: Recording conforms to the RIAA playback curve standard.
Track Lengths:
A1 Groovin' High 3:16
A2 Moten Swing 4:14
A3 Out of Nowhere 4:12
A4 Autumn Leaves 4:08
A5 Donna Lee 2:44
B1 Quicksilver 5:13
B2 Stella by Starlight 4:21
B3 Ornithology 3:51
B4 If I Should Lose You 3:00
B5 Walkin' 3:27
Drummer Credit Note:
Drums : Louis Hayes except B5 (Walkin') Charlie Persip. This is explicitly stated on the rear jacket under “MUSICIANS”.
【状態|Material Condition】
メディア:EX(全体的に良好)
ジャケット:VG+(表面右下に小スレと経年感あり。背表紙に軽微な変色。裏面は比較的綺麗で英文ライナーも明瞭に判読可能)
その他:オリジナル日本語解説インサート付属
【留意事項|Terms & Logistics】
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