京都国立近代美術館
1991年
約28x22x1.2cm
143ページ
ソフトカバー
本文図版はモノクロ中心、カラー約10ページ
※絶版
優れた油彩画家であると同時に、優れた版画家であった長谷川潔の作品図録本。
格別に魅力的なマニエール・ノワールの作品を中心に、ポアント・セーシュ、ビュランなどの直刻法、オー・フォルト、アクアタントなどの腐蝕法による銅版画のあらゆる技法に精通し、それぞれの技法を独自に開発した多くの気品ある作品を多数収録。
初期の板目木版画や木口木版画、石版画も掲載。
制作年、技法、寸法、署名等 サインの有無、サインの有るものはサインの位置とその内容を収録。
図版45点、目録図版182点、参考図版27点、論考テキスト、作家肖像写真、アトリエ風景、年譜、受賞歴など情報満載、
愛好家必携の大変貴重な資料本です。
【目次】
長谷川潔の芸術 島田康寛
図版
目録
参考図版
長谷川潔年譜
【目録凡例より】
各項目の記載順序は次のとおりである。
番号 作品名 制作年 技法
寸法(タテ×ヨコ) 署名等
所蔵品台帳番号(版は版画、図は図書、油は油彩画、素は素描の略)
配列は版画、油彩画、素描の順で、それぞれ
制作年順とした。
【序】より
長谷川潔が、20世紀の初頭にはすでに忘れられていた銅版画の一技法マニエール・ノワールを近代的技法として復活させ、それを用いて繊細で格調高い版画芸術を創造したことは今や多くの人の知るところです。
もちろん、彼は優れた油彩画家であると同時に、優れた版画家であり、マニエール・ノワールのほかポアント・セーシュ、ビュランなどの直刻法、オー・フォルト、アクアタントなどの腐蝕法による銅版画のあらゆる技法に精通し、それぞれの技法を独自に開発した多くの気品ある作品を残しています。また、初期の板目木版画や木口木版画、石版画にも味わい深い作品が少なくありません。しかし、深い黒の中から、自ら光を発するかのように鳥や魚、花や種子草、また砂時計や玩具などが浮かび上ってくるマニエール・ノワールの魅力は格別でしょう。しかも、可視の世界を通して不可視の世界を見、言葉を絶した精神内容を表現する長谷川芸術の特質を最もよく示すのは、マニエール・ノワールによる作品だと言えましょう。
当館が長谷川潔の作品を展示したのは、昭和47年秋の「ヨーロッパの日本作家」展が最初で、これを機に約10点の版画作品を購入しました。一方、昭和44年に東京国立近代美術館次長であった河北倫明氏が当館の館長となり、同氏が東京時代に手がけられた「在外日本作家一ヨーロッパとアメリカー」展以来親交もあり、その芸術を高く評価されていたことから、昭和47年以降、当館の積極的な長谷川作品収集の方向が定まりました。それは、将来において完全なかたちでの回顧展開催を想定してのものでありました。作品の選定は長谷川潔自身が携わり、作者が大切に保存していた最も刷りの良好な作品を当館のために割愛することになりました。しかし、完全主義者であり、すでに晩年を迎えていたため健康も勝れず、その作業は早々には進みませんでした。一方、長谷川潔自身、生存中に完全な回顧展を開催したいという希望は衰えず、昭和53年頃から選定作業も歩調を速めました。そして、昭和54年にはそれまでに送られていた約60点に加えて、展覧会のために選ばれた版画及び油彩画、素描作品100余点が当館に届くことになりました。この間、館長をはじめとする学芸スタッフが長谷川潔と密接な連絡を持ち、機会あるごとにパリのアトリエを訪問して打ち合わせを重ねたことは言うまでもありません。
待望の長谷川潔展が開催できたのはそれからしばらく後の昭和55年夏のことでした。同展では会場の都合で版画131点、油彩画10点、素描12点を選んで展示しましたが、初めての大規模な回顧展として大きな反響を呼びました。しかし、健康が勝れなかった長谷川潔は、この展覧会のために帰国することも叶いませんでした。そして同年暮の12月13日、衰弱のためパリで歿したのです。大正7年の暮れに日本を発って以来、一度も故国の土を踏むことがなかった長谷川潔にとっては、この回顧展が作品だけの帰郷となったわけです。
展覧会のために当館に送られた作品は、それ以後も遺族から引き続き購入し、現在では版画166点、油彩画4点、素描12点が当館の所蔵品となっています。油彩画2点以外はすべて長谷川潔自身の手元にあった作品であります。巻未に掲載した参考図版は展覧会に際して送られて来たものなどで長谷川潔旧蔵の逃愛品も含んでいます。所蔵品図録第3冊として長谷川潔作品をまとめるにあたり、参考としてあわせて撮載する所以であります。
平成3年5月 京都国立近代美術館
【目録 より一部紹介】
日蝕
Eclipse
1925年 (大正14)
ポアント・セーシュとビュラン
9.7×8.6 cm
左下に「ep. d'artiste」
右下に「K. Hasegawa」
版815
思想の生れる時
Pensee naissante
1925年(大正14)
ポアント・セーシュ 手彩色
12.3x9.5cm
左下に「ep.d'artiste」
右下に「Kiyoshi Hasegawa」
版817
奇術
Magie
1925年(大正14)
ポアント・セーシュ,手彩色
11.5×7.7 cm
左下に「ep. d'artiste」
右下に「K. Hasegawa」
版816
水浴の少女
Baigneuse au poisson
1925年(大正14)
ポアント・セーシュ
14.6× 7.4cm
左下に「ep. d'artiste」
右下に「K.Hasegawa」
版818
アトミック時代と平和(クリスマス・カード)
Lage atomique et la paix (carte de voeux)
1957年(昭和32)
ビュラン
8.1 x 8.6 cm
画面に刷込 左下に「1958」、右下に「K. HASEGAWA」
左下に「ep. d'artiste」
右下に「Kiyoshi Hasegawa」
版722
玻璃球のある静物
Nature morte a la boule de verre
1959年(昭和34)
マニエール・ノワール
35.5×25.5 cm
左下に「29/60」
右下に「Kiyoshi Hasegawa」
版192
ほか
【図版】より
三つのアネモネ
シャトー・アルヌーの寺院
オランジュと葡萄
瓶の秋草(ピエ・ド・シェーブル)
玻璃球のある静物
小鳥と胡蝶
薔薇と封書
薔薇と時
飼馴らされた小鳥(草花と種子)
飼馴らされた小鳥(西洋将棋等)
幾何円錐型と宇宙方程式
砂漠の薔薇と海の星
狐と葡萄
仮装したる狐 静物画(フィンランド童話)
小鳥と魚の友愛
小鳥とニつの枯葉
コップに挿したアンコリの花(過去・現在・未来)
メキシコの種子草 静物画
メキシコの鳩 静物画
メキシコの魚 静物画
時 静物画
ジロスコープのある静物
瓶に挿した種草
オパリンの花瓶に挿した種子草
草花とアクアリウム
小鳥と花と果物(賀状用)
幸福の小鳥(賀状用)
ダンス(文学雑誌「仮面」第三巻 第3,4号 表紙のための木版画)
魚見小屋
種子草
ムードンの陸橋
カーニュの風景(カーニュの教会・未完成)
キャンペレの古い家(未完成)
奇術
思想の生れる時
金魚鉢の中の小鳥
木と月
卓上
草花写生
灌木の一枝
ニオンスの村
ヴォルクスの村
白い花瓶に挿した薔薇その他
白い花瓶に挿した草花