文芸書の全集物が商品として全く成立しなくなっている現在、60〜70年代当時に、「世界詩人全集」という企画があり、本屋に並んだその商品の数々を目撃し、購入できた世代に属する自分としては、今こうしてネットの世界を通じて、その思い出を語れ、買い損ねた本を購入もできることの喜びに感激している。
さて、シェリーの詩を青春期に読み耽り、強く傾倒したのは、やはり、星谷剛一氏の、創作翻訳詩とも言うべき見事な日本語の訳に出会えたからこそである。氏の卓抜なる才能とその詩的な感性にあらためて瞠目する。 ここでは小品をふたつ紹介したい。
断片
わがおもい こどくのうちに かつうかび かつきえゆく、
おもいよそおう うたもまた きえて さりゆく、
しろじろとあけゆく、そらのつきのごと。
いかばかり うつくしく さだかなりしよ、
ほしぞらを しんじゅのごと ちりばめし わがおもい。
月に
お前があおざめて見えるのは 生まれの異なった星たちのあいだを
ひとりさまよいながら、変わらず見つめるにふさわしいものを見出せない
淋しい眼のように、たえず変わりながら 空をのぼり
地上を眺めることに疲れたためか。
わたしの「心」の選んだ妹よ、わたしの心は お前を見つめ
やがて人の世の哀しみを知る・・・・・
なお、この全集の巻頭口絵にある、シェリーの肖像画は、他書ではまず見たことのないものであり、その点でも貴重な本である。
書籍内容(一部):
『世界詩人全集01』大山定一
「ゲーテ詩集」 ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
『世界詩人全集02』阿部知二
「バイロン詩集」
『世界詩人全集03』井上正蔵
「ハイネ詩集」 ハインリヒ・ハイネ
『世界詩人全集04』安藤一郎
「キーツ詩集」:安藤一郎
「シェリー詩集」:星谷剛一
「ワーズワス詩集」:加納秀夫
『世界詩人全集05』:木村浩
「プーシキン詩集」 アレクサンドル・プーシキン:木村浩
「レールモントフ詩集」 ミハイル・レールモントフ:木村浩
「マヤコフスキー詩集」:小笠原豊樹
など....