僕たちはもちろん、世界を壊していくグローバリズムに誰よりも自分たちが加担していることを知っている。いっぽうではマシュー・ハーバートのようなアーティストをリスペクトしながら、もういっぽうでは日々の消費活動を通して何よりも自分たちを傷つけている。その積み重ねとともに15年を経て、ますます格差は広がり、それでも『ムーング』から響いてくる優しさは変わらない。本編ラスト・トラック“Gwreiddiau Dwfn / Mawrth Oer Ar Y Blaned Neifion”の、荒れる心をなだめるように響くブラスとギター、そして何を言っているか全然わからないグリフの穏やかな歌。訳を見るとここでもまた、電話のモチーフが見受けられる。「落ち着くんだ 電話が鳴り響く/それは真っ暗な孤独を反映している」……世界はますますひとつになって、なのに僕たちは孤立していくばかりなんだろうか? だがそんな不安と悲しみに、この歌たちはありったけの思いやりでもっていまも寄り添ってくれる。