基本情報|Release Information
レーベル:Erato
品番:STU 71134
フォーマット:LP, Album, Gatefold
国:France
リリース年:1978年
タグ:Classical, Renaissance, Baroque, Historical Instruments, France, Multi-keyboard
作品の解読|Decoding the Work
本作は「音楽院博物館の貴重な楽器群」という企図のもと、パリ国立高等音楽院(CNSM)所蔵の鍵盤古楽器コレクションが音として"開かれた"録音である。演奏するのは、フランス古楽演奏の重鎮ローランス・ブーレイ、チェンバロ界の象徴的存在ロベール・ヴェイロン=ラクロワ、そしてクラヴィコードを自在に操るゴードン・マレーという三者。それぞれが時代と楽器を分担することで、ルネサンス〜バロック〜初期古典派にわたる鍵盤音楽の系譜を、単なる歴史再現ではなく、音響文化としての「時間の生起」として提示する。
収録楽曲は、スペインの盲目の宮廷楽師アントニオ・デ・カベソンによる「ドゥビエンセラ」、パスクィーニによる「ラ・フォリア」変奏、フランス・バロックの色香を帯びたマルシャン、さらにはラモーやDandrieuらの舞曲小品、バッハBWV 853の壮麗なフーガに至るまで、楽器ごとの個性と曲の様式が密接に呼応しながら展開する。
鍵となるのは、録音された各楽器——16世紀末クラヴィコード、1677年Fabre製チェンバロ、1696年Dumont製チェンバロ、1749年Goujon製チェンバロ、そして18世紀のスピネットや初期フォルテピアノ——がすべて当時のオリジナル、あるいは厳密な復元楽器であるという事実だ。そこに録音技術が加わり、単なる演奏を超えて「聴くアーカイヴ」としての意義を帯びる。
例えば、カベソンのクラヴィコード演奏(G.マレー)では、耳を澄ませなければ聴き取れないほど微細な力の振幅が、時間と音のあわいに揺曳する。そしてヴェイロン=ラクロワが奏でるラモーのサラバンドでは、音の粒子が空間に輪郭を描き、フォルテピアノによるチマローザでは、それまでの響きとはまったく異なる即興性が立ち上がる。鍵盤楽器とは、ただ打鍵されるものではなく、時代と制度と身体を媒介しながら響く「装置」なのである。
この録音は、いかにして鍵盤音楽が時代と共に「響き方」を変え、その制度性を組み替えてきたかを、詩的で実験的なドキュメントとして残す。そこにあるのは「楽器」ではなく、「楽器であった痕跡」、あるいは「楽器が生み出した響きの制度」そのものなのである。
状態詳細|Condition Overview
メディア:EX(微細なチリノイズ箇所あり)
ジャケット:VG+〜VG(背表紙ダメージ、ヤケ、軽度の汚れ)
見開きジャケット仕様
支払と配送|Payment & Shipping
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。