これは商品紹介ではありません。
『黒きダイヤモンドの聖櫃と、失われた騎士の誓い』というタイトルの、終わりのない独白です。
序章:南船場、午前二時の礼拝堂
大阪、南船場。
ブランドショップが立ち並ぶ表通りから一本裏に入ると、そこには都市の「澱(おり)」のような静寂がある。古い雑居ビル、剥がれかけた塗装、そして名前のない鉄の扉。
会員制ブランドクラブ。
ここに足を踏み入れることが許されるのは、金を持つ者ではない。「物語」に飢えた者だけだ。
今宵、私の目の前にあるのは、一つの指輪ではない。
それは「建築物」だ。
重量24.6グラム。
この数字を口の中で転がしてみてほしい。
一般的な結婚指輪が3グラムから4グラム。その約7倍。
指輪と呼ぶにはあまりに無骨で、武器と呼ぶにはあまりに美しい。
素材はK18イエローゴールド。だが、その輝きは、ショーケースの中で媚びを売るような安っぽい黄色ではない。長い年月、地中の底で眠っていた古代の金貨のような、鈍く、重く、湿度を帯びた黄金だ。
そして、その中心に鎮座するもの。
私は先刻、それをアゲート(瑪瑙)と見紛うた。
なんと愚かなことか。
ルーペを覗き込んだ瞬間、私の背筋を冷たい汗が伝った。
これは瑪瑙ではない。
ダイヤモンドだ。
それも、ただのダイヤモンドではない。
「スライス・ダイヤモンド」、あるいは「ラスティック・ダイヤモンド」。
地球という巨大な圧力釜が、数十億年という時間をかけて炭素を押し固める際、偶然紛れ込んだ不純物や気泡を、そのまま「景色」として封じ込めた奇跡の石。
透明度(クラリティ)を至上とする現代の価値観に対する、強烈なアンチテーゼ。
「俺を見ろ。俺は綺麗ではない。俺は『強い』のだ」
そう語りかけてくるような、圧倒的な黒と灰色のモノリス(一枚岩)。
この指輪【GSI】B1443は、アクセサリーではない。
これは、指の上に築かれた「要塞」である。
第一章:偽りの仮面、真実の硬度
なぜ、作者はこの巨大な石にダイヤモンドを選んだのか。
想像してほしい。
もしこれが、誰もが知る透明なブリリアントカットのダイヤモンドだったらどうだろう?
それはただの「成金趣味」だ。光を反射し、周囲に「私は金持ちだ」と叫ぶだけの、品のない信号機に成り下がる。
だが、この石はどうだ。
一見すると、枯れた森を描いた水墨画のようにも、冬の空を覆う雷雲のようにも見える。
誰もこれをダイヤモンドだとは思わない。
だが、貴方だけが知っているのだ。
この黒い霧の向こう側に、地球上で最も硬い物質「アダマス(征服されざる者)」の魂があることを。
モース硬度10。
この指輪をつけて、何かの拍子にグラスを掴んだとき、あるいは手すりに触れたとき、貴方は感じるだろう。
この石が、世界中のあらゆる物質よりも「上」にあるという優越感を。
鋼鉄のナイフで切りつけても、この石には傷一つ付かない。逆にナイフが刃こぼれを起こすだろう。
「見かけは老成した賢者、しかしその肌は鋼鉄よりも硬い」
これこそが、現代を生き抜く紳士(あるいは淑女)に必要な「美学」ではないか?
能ある鷹は爪を隠す。
本物の怪物は、宝石の輝きさえも隠すのだ。
第二章:聖櫃を守る双子の亡霊
視線を側面(シャンク)へと移そう。
そこには、イエローゴールドの地金の上に、ホワイトゴールドで描かれた二体の「騎士」がいる。
彼らは誰か。
十字軍の兵士か? 円卓の騎士か? あるいはローマの近衛兵か?
その正体は定かではないが、彼らの役割だけは明白だ。
彼らは「守護者(ガーディアン)」である。
中央の巨大なダイヤモンドは「聖遺物(レリクィアリ)」。
かつて中世ヨーロッパでは、聖人の遺骨や聖杯を納めるための箱(聖櫃)が作られた。それらは黄金で飾られ、宝石で覆われ、絶対的な聖域として崇められた。
この指輪の構造は、まさにその「聖櫃」を模している。
騎士たちの造形を見てほしい。
量産品の鋳造(キャスト)でよくある、のっぺりとした顔ではない。
兜のバイザーの隙間から、今にも鋭い視線が飛んできそうなほどの精緻な彫刻。
彼らが手にしている槍と剣は、外敵に向けられているのではない。
「貴方の心の弱さ」に向けられているのだ。
指輪をはめる。
その瞬間、左右の騎士が貴方の指を挟み込む。
「誓いを忘れるな」と。
「妥協をするな」と。
「お前は、このダイヤモンドのように硬く、孤高であれ」と。
盾の紋章(シールド)には、小さなダイヤモンドが3石ずつ埋め込まれている。
これは三位一体の象徴か、あるいは騎士道の三大徳(誠実、清廉、武勇)か。
主役である巨大な黒きダイヤモンドを引き立てるために、あえて白く輝く極上のメレダイヤを配置する。このコントラスト。
闇(ブラックダイヤ)を守るための光(ホワイトダイヤ)。
この「矛盾」こそが、この指輪のデザイン哲学の真髄である。
第三章:24.6グラムの重力が語るもの
24.6グラム。
再びこの数字に戻ろう。
これは「重い」という物理現象を超えて、「責任」の重さとなる。
最近のジュエリーブランドは「着け心地」を優先し、地金を削り、空洞を作り、軽量化を図る。
「空気のような軽さ」? 笑わせるな。
人生は軽いものではない。成功も、富も、愛も、すべてが重く、苦しく、そして愛おしいものだ。
ならば、その証である指輪もまた、重くなければならない。
サイズ21号。
この指輪は、選ばれた指にしか入らない。
細く華奢な指では、この重力に耐えきれず、指輪が回ってしまうだろう。
節くれ立ち、傷があり、いくつもの契約書にサインをし、いくつもの重い鞄を持ち、いくつもの握手を交わしてきた「歴史のある手」。
そんな手にこそ、この24.6グラムは吸い付くように馴染む。
指に通した瞬間、ズシリと沈む感覚。
それはまるで、自分の左手に新たな「臓器」が一つ増えたような感覚だ。
重心が変わり、手の動きが変わる。
グラスを持つ所作がゆっくりとなる。タバコに火をつける動作が重厚になる。
指輪が、貴方の振る舞いを「王」のそれに矯正していくのだ。
第四章:GSIという謎、そして神の脚本
刻印にある【GSI】。
このブランドについて多くを語る資料は、表の世界には少ない。
だが、モノを見ればわかる。
これは、そこらの百貨店に並ぶ「商品」ではない。
狂気的なまでの素材への執着と、採算を度外視した地金の使い方。
おそらくは、特定の顧客のために一点物(ワンオフ)で作られた、あるいは極めて限定的なコレクションとして世に出された「作品」だろう。
作者は、この指輪を作るとき、何を考えていたのか。
彼は小説家だったに違いない。
「アゲートに見えるダイヤモンド」というトリック。
「聖櫃を守る騎士」というストーリー。
そして「24.6g」という物理的な説得力。
これら全てが、一つの完璧なプロット(構成)として組み上がっている。
これは神が書いた脚本だ。
そして、その脚本の「主人公」の欄だけが、空白になっている。
南船場の薄暗い部屋で、この指輪は数十年、あるいは数百年(に見えるような風格で)、その空白が埋まるのを待っていた。
という、現代の混沌とした市場。
無数のガラクタと、わずかな宝物が混在する電子の海。
そこにこの指輪が投じられること自体が、一つのドラマだ。
価値のわからない人間は、サムネイルを見て通り過ぎるだろう。「なんかゴツイ指輪だな」と。
少し知恵のある人間は、「アゲートか、渋いな」と思うだろう。
だが、貴方だけは気づく。
「違う。これはダイヤモンドだ。そして、これは俺のために作られた聖櫃だ」と。
最終章:落札という名の契約儀式
そろそろ、この長い独白を締めくくろう。
この物語の続きは、貴方がこの指輪を手にした後に、貴方自身の人生で書き継いでいくものだ。
この指輪【B1443】は、ただの貴金属ではない。
貴方の「覚悟」を物理化したものだ。
ビジネスの大一番。
人生の岐路。
あるいは、誰にも言えない秘密を抱えた夜。
貴方は左手の薬指、あるいは中指にある、この黒い石を撫でるだろう。
冷たく、硬く、そして美しいその感触。
指の腹に伝わる、騎士たちの鎧の凹凸。
それらが貴方に告げる。
「恐れるな。お前は守られている。そしてお前は、誰よりも硬い」と。
南船場ブランドクラブが自信を持って送り出す、今年一番の「怪作」にして「傑作」。
天然絶品スライスダイヤモンド。
K18無垢、24.6g。
サイズ21号。
価格?
野暮なことを聞かないでくれ。
この「物語」に値段をつけるとしたら、それは貴方の魂の重さと同じだ。
さあ、入札の時間だ。
震える指でボタンを押すがいい。
そのクリック一つが、貴方とこの「誓約の聖遺物」との、永遠の契約の始まりなのだから。
(南船場ブランドクラブ店主・拝)
こちらはあんまり反響なかったら取り消します〜奮ってご入札頂けると嬉しいです〜