「鷲の国に女王もどりて破るべし月の牢獄」……メキシコとチベットを結ぶ数奇な運命に生まれ、
人々を覚醒へと導いた、少女レヒーナの美しくも壮烈な物語。
壮大なスケールと迫真のリアリズムで謳い上げた、感動の長編歴史小説!
その光、千年の道を照らさん-。レヒーナが呼び起こした目覚めの光は、ついに大きな渦となってメキシコ全土へ広がっていく。
物語は一挙に怒涛のクライマックスへ。民を自由へと導いた、メヒコの女王の劇的な生涯。
力強い産声がロス・レイェス村の静寂を破るように響きわたった。
天地創造の二元性を象徴する男女の火山は、
悠久の眠りに終止符を打つべく合図を送ろうとしたようだった。
地底の奥深くから不気味な轟音が聞こえたと思うと、地上は強い地震に見舞われた。
ハッとわれに返ると、リヒャルトは赤い家に向かって全速力で走った。
同じく出産の結果を一刻も早く知ろうと、ゴム鉄砲を手にした少年が後に続いた。
疲れてはいるが喜びに満ちた表情のシトラリが、小さな赤ん坊の体を胸に抱きしめながら、
この上なくやさしいナワトル語で囁いていた。
「ノコシュケ、ノケツァレ、オティヨル、オティトゥラカ、オティトラルティクパク、
キシュティコ(わたしの首飾り、わたしの羽飾り、命を授かったのね、生まれたのね、
この地に出てきてくれたのね)」
「運動」を邁進させた抗しがたいエネルギーの源泉は、
大統領が妄想したような政権を狙う影の政府高官ではなく、
ほかならぬメヒコの女王その人であった。
彼女は高い目標に向けて「運動」を導くために持てる力のすべてを傾注していた。
レヒーナの毎日の活動リズムはまさに超人的で、一緒に行動する者は悲鳴をあげた。
「総長のデモ行進」以来、レヒーナの姿は広場かと思うとバスの中、
工場かと思うと病院と神出鬼没で、
まるで分身の術を使って市内随所に同時に出現しているかにみえた。
大輪の花のごとく微笑み、不思議な歌を口ずさみながら、
すれ違う人のどんな問題にも真剣に耳を傾け、
メヒコの女王は「運動」への国民の支持を獲得していった。
●主な登場人物
【レヒーナ】1948年3月21日、メキシコの聖火山の麓に生まれる。生後すぐ両親とともにチベットに渡り、ラマ僧のもとでダキニとしての教育を受け、その後メヒコの女王として激動の運命をたどる。
【リヒャルト・トイハ】レヒーナの父。ドイツ人技師。インドを経てメキシコに移住し、シトラリと結婚。ラマ僧ツァンゾ・ツァンバの予言により、生まれたばかりのレヒーナを連れてチベットに移り住む。
【シトラリ・ペレス・デ・トイハ】レヒーナの母。メキシコのインディオ、ナワトル族の娘で敬虔なクリスチャン。優れた直観の持ち主。
【ラマ僧ツァンゾ・ツァンバ】チベットのセラ寺の長老で、あるときインドでトイハ夫妻に出会い、将来二人の子としてアバターが生まれる事を予言する。
【ウリエル】メキシコシティ生まれの建築家。古代の建造物に強く惹かれ、本物のメヒコ人になることを求めて先住民の村を渡り歩く。
【ドン・ミゲル】ナワトル文明最高守護者。
【ドン・ガブリエル】マヤ文明最高守護者。
【ドン・ラファエル】サポテカ文明最高守護者。
【ラマ僧タグドラ・リンポチェ】チベットの宰相。やがてレヒーナの師となる。
【ツェリング・カルポ】チベット高原を駆けめぐる騎馬民族、カンパ族の首領。
【アントニオ・ベラスコ・ピーニャ】
1935年メキシコのゲレロ州生まれ。
メキシコ国立自治大学(ウナム)法学部卒業後、
歴史と会計制度を中心とする研究・教育活動につくしてきた弁護士であり、
メキシコの国民的人気作家。
ユニークな歴史観に立ち、人類の進化や現在地球が直面している危機と
その解決策に深い示唆を与えるような作品を描き続けている。
本書『レヒーナ』は2冊目の作品で、
1968年に世界を席巻した学生運動を単なる政治闘争として捉えるのではなく、
そこに隠されたスピリチュアルな動機を克明な筆致で再現し、大ベストセラーとなった。
登録情報-上巻
単行本: 240ページ
出版社: ナチュラルスピリット (2002/7/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4931449247
ISBN-13: 978-4931449244
発売日: 2002/7/22
梱包サイズ: 19 x 13.2 x 2.4 cm
登録情報-下巻
単行本: 343ページ
出版社: ナチュラルスピリット (2002/10/02)
言語: 日本語
ISBN-10: 4931449255
ISBN-13: 978-4931449251
発売日: 2002/10/02
梱包サイズ: 19 x 13.2 x 2.8 cm