1. 【基本情報|Release Information】
これは、録音技術と芸能身体が交差する瞬間を、バイノーラル録音によって可聴化した音の劇場である。
JVCが手がけた『衝撃の実験』シリーズの第2弾は、鬼太鼓座、芸能山城組、宮下伸らによる身体的音響と、クラシック演奏やサーキット音を横断する空間知覚のカタログである。
鬼太鼓座・芸能山城組という「演者としての身体」を、空間内に再構成するこの一枚は、ヘッドフォン文化と制度的芸能録音の交錯点を読み解くための重要資料でもあります。現代の空間音響表現(ASMR、VR、立体音響演出)との比較研究にも耐える内容です。
2. 【構造と文脈|Structure & Context】
音響構造と録音設計|Sonic Architecture
本作では、ダミーヘッドによるバイノーラル録音が全編にわたって用いられ、360度の音場知覚が実現されている。
演目は、以下のようにジャンル横断的な構成であり、単なる聴覚実験を超えて、「音の制度横断」にまで踏み込んでいる:
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鬼太鼓座による大太鼓の打音——耳を突き抜ける物理振動と定位変化の演出。
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芸能山城組による《咒陀羅秘行》からの抜粋——人声・律動・祝詞的倍音の重畳。
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ビクター・フィルハーモニック・オーケストラによるクラシック——音場内配置と距離感の見本演奏。
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スーパーカーのサーキット走行音、民謡、環境音、ナレーションなどの音源群——人工と自然の定位的断片。
これらは単に「音の並列」ではなく、バイノーラルという一つの聴覚軸を通じて再配置された音素材の運動体である。
制作背景とJVCの戦略|Label Strategy & Acoustic Intent
JVC(日本ビクター)は、1970年代半ばに自社の録音技術をアピールする目的でこのシリーズを企画。Vol.2ではより前衛的かつ身体的な演目が投入され、芸能山城組や鬼太鼓座といった実演芸術の身体性が、聴覚上の仮想空間に持ち込まれるという構造的飛躍が見られる。
本盤は、以下の戦略的意図のもとに設計されていた:
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録音技術のPR(とりわけ自社バイノーラル技術)
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ヘッドフォン市場の拡大支援
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“聴覚による空間の物質化”という実験的プロトコルの公開
音楽というよりは、「聴覚映像」や「音響装置」そのものの提示というべき録音であり、カタログに記された演目が実験対象として作用する構造になっている。
文化的意義と知覚の解体|Cultural Logic & Perceptual Drift
このシリーズの最大の意義は、「音楽」ではなく音そのものの定位/移動/質量にリスナーの意識を向けさせる点にある。音はここで「聞かれる」のではなく、**空間内で振る舞い、方向を持ち、距離を持ち、質量を持つ」。
とりわけ、芸能山城組や鬼太鼓座といった儀礼的集団が音響デモの文脈に組み込まれている点は特筆に値する。これは、芸能=制度化された音の儀式を、録音技術によって再制度化する運動であり、まさに音と制度、身体と知覚の交差点を記録した歴史的実験盤といえる。
3. 【状態詳細|Condition Overview】
メディア:EX
ジャケット:VG+
付属品:オリジナル・インサート付属
4. 【支払と配送|Payment & Shipping】
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、微細なスレや経年変化にご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。