
スワロー受信機
三極管だけで構成された旧タイプの4球受信機です。
使用真空管はUY-56(再生検波) UX-26B(低周波増幅) UX-12A(低周波増幅) KX-12B(整流)
増幅度が五極管の1/10にも満たない三極管だけでどの程度検波できて、スピーカーが鳴らせたのか
レストアラーの興味は尽きません。
五極管(ペントード)が一般的になるのは昭和12年以降。 その増幅率の高さにより検波管には
五極管を用いるのがあたりまえとなり、これらの並四を「新並」、三極管トランス結合の並四を「旧並」と
区分していた様です。
この旧並から新並への改造は簡単であり、高感度なうえ断線し易い低周波トランスを省けるとあって、
多くの旧並が何らかの改造を受けていて、オリジナルを保つ個体は多くありません。
入手時この受信機は、初段トランス結合、終段抵抗結合の状態でした。
同時に低周波トランス断線、アンテナコイル断線、スピーカーコイル断線でしたから、最期はどのような動作をしていたのか、
あるいは動作すらしていなかったのか、修理途中なのかも不明な品でした。
レストアはオリジナル回路を探ることから始め、
抵抗結合、チョーク結合、トランス結合を初段、終段それぞれの組合せで検証しました。
チョーク結合はゲインが低く、物になりません。 しかし、それ以外の抵抗やトランスの組合せでは
何をやっても発振が起きます。モーターボーティング音が盛大に鳴って収拾がつかないのです。
そんな時、兵藤勉先生が昭和24年に著わされた「ラジオ修理メモ」に答えが見つかりました。
即ち、26B, 12Aの共通バイアス回路に限って正帰還発振が起きること、極性を変えて帰還量を減らすと
発振は止められるが、そもそも抵抗には極性が無いのでそれが出来ないこと、
トランスなら一つの端子を逆接してやると極性が変わって、モーターボーティングが止まるとあったのです。
しかもそれは、昭和24年にあって、「大昔のラジオ屋が普通に知っていた技」であったとか。
こういう知の伝承を繰り返して日本は電子立国たりえたのですね。
ともあれ本機の増幅段は、三極管ならではのトランス二段結合、終段は位相反転で決まりました。
本機のメインバリコンは185pFと半分の容量しかなく、通常のコイルでは受信下限が700KHzになります。
これでは低い周波数が入らないので、コイルの自作を試みましたが、三極管検波で使える程Qが高くて、
再生がスムーズにかかるませ様なコイルは私には作ることが出来ませんでした。
やむなく手持ちで優秀なコイルを選んで付けましたが、500~600KHz台は諦めました。
さて以上の様な「旧並」は現代に実用になるのか?
ちゃんとしたアンテナとアースは並三、並四のお約束です。
高さ10m、長さ12mが標準アンテナとされており、地中アースもセットです。
それでは当時の人はどうやって聴いていたのでしょうか? 資料によると「アースアンテナ」が多用されて
いたようです。受信機のアンテナ線の被覆を剥いて、水道の蛇口金物に巻き付ける。
地中を走る水道管をアースに見立ててアンテナ線を繋ぐ、変ですが相当感度が出ます。
現代では塩ビ管なのでこの手は使えず、コンセントのアースターミナルに繋ぐと良いでしょう。
しかしこれで簡単に受信できるほど三極管検波は甘くありません。
住宅環境の違いや、検波管も90年の年でボケているでしょうから昔よりも難易度が上がっているのです。
3つのアンテナ端子を変えてみたりしながら粘ります。右手のチューニングは繊細でBCLさながら。
夜半過ぎて電離層が出来た頃、何やら入って来る。それを左手の再生バリコンで再生量を調節し、発振一歩手前の
最大感度に追い込みながら、目を閉じて耳を澄ませるのです。
音楽も良いでしょう。隣国の言葉も聞こえます。
コンバーターノイズの無い、ストレートラジオ特有の澄んだ音色に惹き込まれます。
コイルが良品で混信は殆どありません。
こうして聴けた時の感動はスーパーヘテロダインでは味わうことがありません。
ここまで読んでこのラジオを手にされるのは、上級者の方ですから余計な心配はしませんが、
決して簡単ではないことは覚えておいてください。