
定価1540円
本の状態に悪い点全く無し
身近にあふれている日本語の興味深い具体的な言語事例を中心に取り上げながら、認知言語学の基本的な考え方について、平易にわかりやすく、コンパクトに解説。
第1章プロファイリングの世界、第2章メタファーの世界、第3章ブレンディングの世界。
《「はじめに」より》
本書『ことばの認知プロセス―教養としての認知言語学入門―』は、一般読者をその対象として書かれた、認知言語学の入門書です。
言語学と聞けば、一般にはかなり小難しいイメージを想起されて、何かしらの抵抗感をおぼえるという方も多いかもしれません。また言語学の前に「認知」ということばが付加されていることにより、なおのこと、さらに一層難しいイメージを抱いてしまう方もいるかもしません。確かに、このような言語学のイメージは、伝統的な言語学においては、間違いなく存在してきたといっても過言ではないでしょう。
しかしながら、本書で入門的な記述を提示していく、近年目覚ましい発展を遂げてきた認知言語学(cognitivelinguistics)と呼ばれる新しい言語学分野においては、このようなイメージからは大きくかけ離れていると言うことができると思います。読んで頂ければすぐに分かってくると思いますが、このように言えるのは、まさに認知言語学の基本的な考え方に集約されてくると思われます。つまり、言語現象学の記述や説明を行っていくのに、私たちが日常生活を営んでいくうえで無意識の内に普段活用している認知プロセス(cognitive process)に着目して、その認知プロセスの観点から、言語現象の記述や説明を行っていこうとするからにほかなりません。一般に、このような考え方を採用することは、言語現象の実際的な姿形を直感的に分かりやすいものにしていくことができると同時に、小難しいイメージで塗り固められた言語学分野への抵抗感を払拭することにもつながっているように思われます。
本書では、このような認知言語学の研究の方向性を中核に据えながら、認知言語学の研究領域において提示されてきた多種多様な認知プロセスの中から、特に重要性の高いと考えられる、プロファイリング(profiling)/メタファー(metaphor)/ブレンディング(blending)と呼ばれる3つの認知プロセスについて、その基本的な考え方を紹介していきたいと思います。
本書の流れをあらかじめ提示しておくと、まず、第1章「プロファイリングの世界」では、視線対象に注目を浴びせて、その注目度合いを高めていく認知プロセスとして一般に定義される、プロファイリングが関与する多種多様な言語現象について、紹介していきたいと思います。次に、第2章「メタファーの世界」では、類似性認識に基づいて、何かを別の何かでたとえるという構造化で成立してくる、メタファーが関与する言語現象について、紹介していきたいと思います。そして最後に、第3章「ブレンディングの世界」では、複数のものを部分的に混ぜ合わせていくことで、今までにない新規の構造や効果を生み出していく、ブレンディングの認知プロセスが関与する言語現象について、紹介していきたいと思います。
《目次より》
第1章 プロファイリングの世界
プロファイリングとは何か?
プロファイリングの言語的一般化
「仕切り線」と「徳俵」の意味
大相撲の階級とその意味
「今日」「昨日」「明日」の意味
前景化と背景化
「人を殺すのは人であって、銃ではない」
プロファイル・シフティング
言語現象の中のプロファイル・シフティング
プロファイル・シフティングの間接的言語化
メトニミー ―近接性の認知プロセス―
ズーム・インとズーム・アウト
ズーム・インの言語現象
ズーム・アウトの言語現象
第2章 メタファーの世界
メタファーとは何か?
直喩と隠喩
直喩と隠喩のさらなる例
擬人化と擬物化
擬人化と擬物化のさらなる例
プロファイリングをたとえる
第3章 ブレンディングの世界
ブレンディングとは何か?
比較文脈とブレンディング
時制解釈とブレンディング
ユーモア解釈とブレンディング
「ふたりで竜馬をやろうじゃないか」