
本の状態に悪い点全く無し
組込みソフト開発に携わるソフトウェアエンジニアは自分たちが他の分野の技術者たちが容易に習得することができない技術を身につけ、大きな可能性を秘めたポテンシャルを持っているということに気づいているでしょうか。 組込みソフト開発を長年経験してきた技術者はある組込み製品のある特定のドメインに関する知識と技術を身につけ、その分野における組込みソフトのスペシャリストとなっているはずです。 ただ、今後拡大し複雑化する組込みソフトウェア開発を乗り切っていくためには、このような特定ドメインにおける組込みソフトのスペシャリストにも、たった1つ足らないものがあります。 それは、自分たちのドメインにソフトウェア工学の技術を導入してテーラリング1することです。 残念ながら、ソフトウェア工学の技術、特に新しい技術は、OJT(On the Job Training)では伝承しにくいものです。また、教科書に書いてあることをそのまま現場で実施しようとしてもうまくいかないこともあります。ソフトウェア工学の技術を、自分たちの開発の現場に合わせてテーラリングできるかどうかが組込みソフトエンジニアを極めるためのカギとなります。 図エピローグをご覧下さい。組込み商品開発に必要なさまざまな技術を象徴するスナップショットと、これらの場面をつなぐ時間の流れ(フェーズ)を技術者個人、プロジェクトなどいろいろな要求の視点から眺め、重み付けを表現しています。 注目していただきたいのは、すべての要求を満たすにはオールラウンドに技術を身につけなければならないということ、トップダウンのアプローチだけでも、ボトムアップのアプローチだけでもダメで、どちらの視点も持ち合わせなければいけないということです。 組込みソフトエンジニアが成長しプロジェクトをリードしていくようになればマーケティングの技術が求められ、マーケティングの技術を身につけることで市場と顧客要求を十分に把握できるようになります。市場とユーザーニーズを分析することができれば、商品の顕在的価値と潜在的価値を高めるために何をすればよいのか、次にどんな技術を習得すればよいのかわかるようになります。 そして、ユーザーニーズを理解し、必要な技術が身についてくると、組込みソフトがますますおもしろくなって、「やりたいことがたくさんあって時間がいくらあっても足りない」と感じるようになるはずです。 そう感じるようになったら、あなたは、少しだけ、「組込みソフトエンジニアを極めた」と言えるかもしれません。ただし、ソフトウェアの技術は常に進化しており、新しいハードウェアデバイスは次々を開発されていきます。組込みソフトエンジニアが身につけるべき知識や技術に終わりはないのです。 本当に「組込みソフトエンジニアを極めた」と感じるのは、組込みソフトエンジニアがキーボードを叩くことをやめて、これまで自分が世に送り出してきた組込み製品の数々を回想するときでしょう。 組込みソフトエンジニアを極めるには、またまだ時間はたっぷりあるということです。 未来のある組込みソフトエンジニアたちの幸運を祈りつつ、ここでペンを置きたいと思います。 (日経BP社で発行されていた「組込みソフトエンジニアを極める」の改装・改訂版である。)