・今晃さん作の10cm、昭和61年5月16日、斎藤幸兵衛型傘・ボタン模様、{K031}の中の小寸と同一手です。
・HP「木おぼこ・今晃」の桑原金作署「今晃のこけし」の中で、「今晃のこけし」=(23)思い出のこけし・その2 では以下のように述べられています。
幸兵衛風笠こけし初作は、6寸(61年4月)「E026」3本と小寸「E052」 3本である。綺麗さを押さえ、若干の滲みにも芸があり、顔も上品で、目の輝きは穏やかで美しい。揮鼻は3筆で、口は簡素に無造作に描き好感が持て、いかにも物静かな品がある。ロクロ線は赤、紫を何本とも決めず、間隔を一定にせず、流れの自由な本数で、遅いロクロ回転で筆を上下させて描くため、線に滲みと余白が見え、独特の味わいが現れる。牡丹の花弁も筆を数回置いて描き味が出、茎は青で左右に描き分けている。
私は、「笠こけしを尺から2寸まで、」お願いした。「K031」は、61年5月15日、笠こけしをお願いしてから19日後、7寸から2寸までを受け取る。初作より胴太く、中央の絞りも裾広がりで上品で、立体像は満点で、描彩も素晴らしい。上品な厳しさの代表で、眼光の鋭さは言葉では表現できないほどの迫力で圧倒される。私が辛いこけしを好きなのをよく知っておられ、相当気合いを入れ、自らの構図を一気の筆で描きあげた。牡丹の花も、ボンボンと筆を置いた感じで、その早さがこけしに現れた実像である。5月25日、待望の尺と8寸、3寸、2寸を受け取る。大胆ですばらしい尺、9寸こけしなどは、太型と細型で挽き分けられ、非常に参考になる。8寸も太さと絞り方に微妙な違いがありながら見事な仕上がりで、今さんの木地挽き研究には感心する。ロクロ線の本数、高さなどは自由に変化をつけ、夢があって楽しい。眉は太く大胆に、目の光には気品があり、表情の妙味と受け止めている。このこけしには撥鼻がよく似合っており、富士額の口元は簡素で美しい。全体に、前回の7寸以下ものより優しく、もの静かで描かれ、今日しか生まれない立派なこけしだ。夢に見る様な笠こけしで優秀な作品である。左尺からの太い方と右の細い尺をこのように挽き分けることは珍しく、今さんならではの仕事ぶりに感謝の気持ちで一杯である。同じ尺でも重量感の美と細身の鋭さの美を味わせてくれ、今さんの美に対する奥の深さと配慮が誠にありがたい。描彩は太い方は温顔で優しく、細い方は厳しい迫力で対照的であり、牡丹の茎は左右に描き分けられ、楽しめる。ロクロ線の数もおなじではなく、9寸は太さとロクロ線、牡丹を描き分け、8寸も左右の木地の太さ、顔の描彩に強弱を描き分け、甘辛さが誠に素晴らしく、技の広さに心打たれる。こけし群全体の迫力も満点で、尺から8寸までは相対的に優しい表情で、7寸から4寸までは厳しい。この時期の品格を物語っており、今晃の傘こけし構図での表現は、以後に生まれた傘こけしにいろいろの変化を持たせた一つの時代の代表作である。